今日は旧暦八月十五日で、香港や多くのアジア地域では中秋節(ジョーン・チャウ・ジッ)です。日本では中秋の名月といい、月見団子を食べながら月見しますが、香港では月餅(ユッ・ベェィン)と果物を食べ、燈籠(ダァン・ロン)をつけ、月見します。今回は月餅と香港の中秋節の祝い方をご紹介します。
月餅の由来は革命と関係する?
日本では、中華街や中華商店などで、年中月餅を売っていますが、本来、月餅は中秋節前後あたりでしか食べられない食べ物です。香港で売っている月餅も種類が多く、さらに香港発祥のものもあります。
唐の時代から月餅に似た焼き菓子があるといわれていますが、八月十五日に月餅を食べたり、人にあげたりするようになったのは、元朝末、明朝初期とされています。元朝はモンゴル人ジンギス・カンの統治により始まった時代で、多くの時代の終りに似て、末期頃は人々の生活が苦しくなっていった。そこで後の明朝皇帝となる朱元璋が革命を起こそうとしていた。ただし、革命するにあたっての情報交換が大事で、朝廷にバレずに一斉に挙兵するために、どのようにして知らせるかに悩まされた。そのときに、臣である劉伯温が策を出した―月餅に「八月十五殺韃子(八月十五日に外国人(ここではモンゴル人)を殺す)」という紙を入れて送ることでした。食べ物の内部までチェックしないということを利用した策であった。見事に革命を起こしたことでその後も慣習として、中秋節に月餅を送り合い、月餅を食べるようになったのです。この説は月餅に関するもっとも有名な説として伝えられています。
月餅の種類と香港発祥のオリジナル月餅
多くのアジア地域でも中秋節に食べる月餅ですが、それぞれ味や作り方が異なり、香港でよく見られる月餅は四大タイプ:傳統月餅、奶黃月餅、冰皮月餅、雪糕月餅があります。
・傳統月餅(チューン・トーン・ユッ・ベェィン)
塩漬けしたアヒルの卵黄と蓮の実のあんを包んで焼いた月餅です。呼び方はあんの種類と卵黄の個数によって変わります。蓮蓉(リン・ヨン)は蓮の実のあん、白蓮蓉(バッ・リン・ヨン)は皮なし蓮の実のあん、雙黄(ソーン・ウォン)は卵黄二つ、三黄(サム・ウォン)は卵黄三つです。例えば、蓮蓉月餅=蓮の実あんと卵黄一つ、雙黄白蓮蓉月餅=皮なし蓮の実あんと卵黄二つです。断面に映るあんに包まれた卵黄は月のように見えます。
その他には伍仁月餅(ンー・ヤン・ユッ・ベェィン)もあります。蓮の実と卵黄にかわって、ナッツがたくさん入っているものです。蓮蓉の方に比べて、甘さが少し控えめで、甘しょっぱく、ナッツの香りを感じるため、かなり人気です。
・奶黃月餅(ナイ・ウォン・ユッ・ベェィン)
香港オリジナルの月餅の一つで、飲茶の時の点心、奶黃包(ナイ・ウォン・バウ、カスタードマン)からの発想で、カスタードに細かく刻んだ塩漬けしたアヒルの卵黄を混ぜて、皮で包んで焼くものです。焼き加減が難しいため、一般的な傳統月餅より小さいのが特徴です。
・冰皮月餅(ベィン・ペイ・ユッ・ベェィン)
もち米粉と小麦粉で作った皮で、緑豆(ロク・ダウ、青小豆)あんとフルーツあんを包んで、焼かない月餅です。皮は和菓子の求肥(ぎゅうひ)に似ており、少しもっちりとした食感です。1960年代から香港とシンガポールで作られています。焼かないことと、フルーツ感があることで、従来の月餅よりヘルシーで人気です。冷凍保存し、食べる前に解凍する必要があります。
・雪糕月餅(シュッ・ゴウ・ユッ・ベェィン)
広東語で雪糕はアイスクリームの意味で、雪糕月餅つまりはアイスクリームの月餅です。ハーゲ〇ダッツが自家ブランドの雪糕月餅を出したことでこのブームが広がりましたが、最初に雪糕月餅を作ったのは1960年代、香港の牛乳工場と言われています。チョコアイスでフルーツあんとレーズンを包むのはとても斬新なアイデアでした。今はアイスの外側にチョコでコーティングすることが多く、イメージ的にはパ〇ムアイスに近いです。
一盒に入る月餅の個数にも決まりがあります。香港人は偶数を好むため、4個入り、6個入りが基本です。または8個入りで、大きいの一つと小さいのが7つ、これを七仙伴月といいます。それと10個入りで、大きいの一つと小さいの9つ、これを九星伴月といいます。両方とも、大きい方を月として例えられています。月餅のほかに、旬の果物も食べます。秋に収穫できる果物が多く、豊作の祝いと祈願も兼ねているでしょう。
月餅のほかに燈籠も中秋節アイテム
なぜ中秋節に燈籠(ダァン・ロン)をつけるかはわからないが、香港では定番な慣習となりました。香港の燈籠は、日本でいえば、灯篭より提灯に近いものです。燈籠も伝統タイプと新タイプがあります。年齢がバレてしまうかもしれませんが、筆者は小学校の頃、美術の授業の宿題で伝統燈籠を作らされたこともありました。伝統タイプも二つに分けられ、ともにロウソクを使います。新タイプはプラスチック製で小さい電球が内蔵され、音が流れるものもあります。
中秋節を三日間に渡りお祝いする人もいます。それぞれ月見するとき呼び方が違います。十四夜は月をお迎えするという意味で、迎月(イェン・ユッ)、十五夜は月をじっくり鑑賞するという意味で、賞月(ショーン・ユッ)、十六夜は月を追うをいう意味で、追月(ジョイ・ユッ)といいます。月見のため、夜更かしする人が多いので、香港では中秋節の翌日を祝日としています。ちなみに、広東語での俗な言い方ですが、「八月十五(バッ・ユッ・サップ・ンー)」はお尻を指します。月みたいに丸いからかもしれません。(笑)大きく丸い月は「團圓(テューン・イュン)」の意味もあり、また地球のどこから月を見ても同じのため、家族が遠くに離れても、心はつながっている意味もあります。ここ数年間は様々な理由で、家族と離れて暮らさないといけない、または自由に移動できず、家族と会えない人が増えたが、中秋節の月を見上げて、同じ月を見ている家族がいることを思え出せば、たとえ一人でいても、少しは温かく感じるのではないでしょうか。家族や友人と一緒に月見できる方も、このひと時を大切にしましょう。