予告通り、最終回は點心の紹介になります。定番のものをずらりと並べて、あとはいくつか消えつつある幻の伝統點心を紹介いたします。
その前に、點心のカテゴリーに軽く触れたいと思います。主に蒸し點心、揚げ點心、炒め點心、焼き點心、肉まん系、お粥、腸粉、デザート系があります。発音の後ろにある説明はあくまでもイメージで、実際はどんなものかはぜひ一度食べてみてくださいね!
蒸し點心は蝦餃(ハー・ガウ、えび餃子)、燒賣(シウ・マイ、シュウマイ)、粉果(ファーン・グゥオ、蒸し餃子の一つ)、牛肉球(ンアウ・ヨッ・カウ、パクチー入り牛肉団子)、鳳爪(フォーン・ザウ、鶏の足)、排骨(パイ・グァッ、スペアリブ)、金錢肚(ガム・チーン・トウ、牛もつのハチノス)、牛柏葉(ンアウ・パッ・イップ、牛もつのセンマイ)などがあります。
揚げ點心は鹹水角(ハム・スイ・ゴッ、肉あん入り揚げ餅)、芋角(ウー・ゴッ、タロイモ入り揚げ餅)、炸雲吞(ザー・ワン・タン、揚げワンタン)などがあります。
炒め點心は炒米粉(ツァウ・マイ・ファーン、焼きそばのビーフンバージョン)、煎腸粉(ジーン・チョーン・ファーン、焼き干し海老入り腸粉、腸粉は下に説明あり)などがあります。
焼き點心は蘿蔔糕(ロー・バッ・ゴウ、大根餅)、馬蹄糕(マー・タイ・ゴウ、シログワい餅)、芋頭糕(ウー・タウ・ゴウ、タロイモ餅)などがあります。
肉まん系は鷄包仔(ガイ・バウ・ザイ、とり肉まん)、叉燒包(チャー・シウ・バウ、香港チャーシューまん)、糯米巻(ノー・マイ・ギュィン、肉まん生地でもち米を巻いて蒸し、太巻きといかめしの合体のようなもの)、奶黃包(ナイ・ウォン・バウ、カスタードまん)などがあります。
お粥は皮蛋瘦肉粥(ペイ・ダン・サウ・ヨッ・ジョッ、ピータンと豚ひき肉のお粥)、及第粥(カップ・ダイ・ジョッ、豚モツ入りのお粥)などがあります。
腸粉は叉焼腸粉(チャー・シウ・チョーン・ファーン)、牛肉腸粉(ンアウ・ヨッ・チョーン・ファーン)、鮮蝦腸粉(シーン・ハー・チョーン・ファーン)、羅漢齋腸粉(ロー・ホーン・ザイ・チョーン・ファーン、ベジタリアン腸粉)などがあります。腸粉(チョーン・ファーン)は水溶き米粉の生地を蒸してくるくるロール状にしたもので、豚の腸に似ているための名前です。具なしのものは豬腸粉(ジュ―・チョーン・ファーン、豬は豚の意味)、前に来るのは巻いている具を示します。
デザート系は蛋撻仔(ダン・タッ・ザイ、エッグタルト)、蛋散(ダン・サーン、香港式チュロス)、桂花糕(グヮイ・ファー・ゴウ、キンモクセイ入りゼリー)などがあります。
奥左:叉燒包、奥右:鳳爪
前左:蒸し豆苗餃子、前右:牛肉腸粉
奥:牛肉球
前:燒賣
點心の種類はありすぎるくらいたくさんあるため、一つ一つ詳しく説明することを割愛いたしますが、ここでは3つほど、出会えたらラッキーな點心をご紹介いたします。
鵪鶉蛋燒賣(アム・チョーン・ダン・シウ・マイ)
うずらの卵入りの肉シュウマイです。なぜこれを売っている茶樓が少ないかというと、これを作るには手間がかかるからです。普通の燒賣と違って、茹でたうずらの卵を豚肉とえびの混ぜたタネに入れてさらに白い皮で包むため、工程が複雑かつ多いです。また、うずらの卵はコレステロールが高いと言われており、健康志向の現代人には向いていないというのもあります。でも、これはとてもおいしいのです!
雞球大包(ガイ・カウ・ダイ・バウ)
豚肉、鶏肉、タケノコなどが入っている、具だくさん大きい肉まんです。一つで大満足します。昔は体力のある仕事をする人が多く、一つで満足できるような肉まんはぴったりでした。また、茶樓側もこのサイズ感を売りにしていました。だが、茶樓にとってこれはあまり利益のない一品のため、一卓に一個までという制限をかけることもありました。
啫喱(ジェー・レイ)
色鮮やかなゼリーです。特に何の技術もないゼリーですが、子どもたちには大人気でした。目当てはみな、横に挿してあるミニの紙の傘です。(笑)大人になってからこれを頼むことはなかなかないですが、ミニ傘は昔懐かしい、子供のときの茶樓での記憶です。
點心師傅と蒸籠
ここで皆さん、お気づきでしょうか?多くの點心は蒸籠(ジェーン・ロン、せいろ)に入っているのです。點心は蒸すという調理法がメインで、竹製の蒸籠は蒸すのに最適です。適度に開けてある穴は蒸気を通し、原材料の竹は蒸す過程にできる水滴などを吸収します。各層の食材が均等に加熱され、味も薄くならないのです。また、竹は腐りにくく、匂いつきにくい特性もあるため、今でも金属製やプラスチック製のものに変えられることなく、點心と言えば竹のせいろです。いいせいろを作るには複雑な工程があり、竹せいろ職人という職業があるくらいです!
一方、メインの點心は點心師傅(ディム・サム・シー・フー)という職人によって毎日作られています。茶樓は朝早くから開店することが多く、點心師傅たちは毎日午前3、4時に起き、點心を作るのです。點心は作る工程も複雑で多く、餃子や肉まんの皮をこねたり薄くしたり、タネをこねたり、皮で包んだり、蒸すタイミングをコントロールしたりして、とても大変な仕事です。そのため、料理人の中でも點心師傅は特別です。他の料理もできる點心師傅はいますが、料理人だからといって、點心を作れるとは限らないのです。また、竹せいろ職人と點心師傅のその技術は、両方とも香港の無形文化遺産リストに入っています。
なぜ変な数?
點心の数は3個のものが多く、物によっては2個と4個もあります。日本のプリンは3個入り、ヨーグルトは4個入りで家族構成と関係がありますが、香港の點心の数は家族構成とは関係がないそうです。一説はコストパフォーマンスの問題、一説は映えの問題ですが、まだはっきりとわからないです。しかし、「遠慮の塊」はないので、最後の一つになったけど食べたいって思った場合は同席者に聞きましょう!
家族団らんの象徴
「茶樓に飲茶行こう!」では、年配の方が一人あるいは老夫婦で茶樓行くことを言及しましたが、実はそれは平日の朝に多く見る光景で、土日祝は家族で飲茶行く人が圧倒的に多いです。おじいちゃんおばあちゃんにとっては孫、孫娘に会う機会とも言えます。また、香港では夫婦共働き、子どものお世話を家政婦さんに任せる家庭も多いです。法律上、家政婦さんは毎週日曜日が休みになっているため、夫婦で子どものお世話を見ることになり、それで朝ごはんは飲茶で、その後どこかに遊びに行くということもあります。日本人は飲み会という交流の場があることに対し、香港人は飲茶があります。「今度飲みに行こう」という日本の建前的な誘い文句に対し、「得閒飲茶(ダッ・ハン・ヤム・チャー、時間あるときに飲茶行こう)」は香港人の建前的な誘い文句があります。飲茶は商談にも使えますが、飲みと一緒で、気の置けない人と行くのが一番です。飲茶に行ける人を大切にしましょう。今度は様々な理由で、長らく会えていない大切な人を誘い、ゆっくりお茶を飲み、點心を食べ、お話もしながら、素敵なお時間を過ごしましょう。