香港唯一の永久業権を持つ聖ヨハネ主教座堂 ― その歴史と特別な地位
香港の土地所有制度に詳しい方ならご存知かもしれませんが、実は香港の土地は基本的に政府が所有しています。通常、個人や企業は政府から土地を買うことができず、リースの形になっており、そのリース期間は一般的に50年、75年や99年と決められています。期限が過ぎると更新または返還が必要です。このように、政府が土地を所有し、そのリース料を徴収するのが香港の土地制度です。
しかし、香港で唯一の永久業権を持っている場所があります!それが、香港島の中環(セントラル)に位置する聖ヨハネ主教座堂(St. John’s Cathedral)です。今回は、聖ヨハネ主教座堂がどのようにしてこの特別な業権を得たのか、その歴史と背景について紹介します。

聖ヨハネ主教座堂の誕生と特別な地位
聖ヨハネ主教座堂が建設されたのは、香港がイギリス植民地であった1840年代に遡ります。当時のイギリス政府は香港を「東洋の要塞」として発展させる計画を進めており、その中で西洋人が集う宗教の拠点としての役割を担うべく、この教会が建設されました。1847年、教会の建設資金が募られ、政府は建設に必要な土地を提供しました。
当時、こちらの教会を建設するための法令「No.2 of 1847」を発されて、タイトルには「この法令の目的は、香港島のビクトリア城に教会を建設することである」と明記されています。これによってこの土地は「永続的な教会用地」として特別な地位が与えられ、教会のために永久に使用できると規定されたのです。

永久業権の条件
この永久業権には一つの重要な条件があります。それは、この土地が必ず「教会として使用されること」です。もし教会が閉鎖され、宗教活動が行われなくなった場合、この土地は自動的に香港政府に返還されるという規定が設けられています。

返還後も変わらぬ業権の保護
1997年の香港返還後も、聖ヨハネ主教座堂の特別な業権は保護されています。返還後、香港のほとんどの土地が中国政府に引き継がれ、リース契約の更新が求められる中、聖ヨハネ主教座堂だけは引き続き特別な地位を保持しています。香港特別行政区もこの特殊な土地所有を尊重しており、今後も教会活動が続く限り、教会は永久にその土地を保有し続けることができます。
香港の歴史を物語る特別な存在
香港では、都市の変化や再開発が進む中で、歴史的建築物が次第に姿を消しています。その中で、聖ヨハネ主教座堂は香港の長い歴史を物語る貴重な存在として、市民や観光客に愛され続けています。この教会が持つ特別な永久業権は、香港の土地制度においても一際異色であり、歴史的・文化的価値を象徴するものと言えるでしょう。
次回香港を訪れる際には、ぜひこの教会に立ち寄り、その特別な歴史を感じてみてください。
