日本で花火大会といえば夏の風物詩ですが、香港で花火と言ってもあまり夏のイメージがないです。なぜならば、香港の花火大会は年に3回、それぞれ2月、7月と10月にあるからです。それらを「香港三大花火大会」と言っても良いでしょう。
香港の花火大会を紹介する前に、ミニミニ広東語教室です。(笑)広東語で花火は漢字で「煙花」と書き、「イィン・ファー」と発音します。花火をやるのは「放煙花」で「フォン・イィン・ファー」、花火を見るのは「睇煙花」で「タイ・イィン・ファー」と言います。広東語はSVO語順なので、動詞の「放」と「睇」を名詞の「煙花」の前に置きます。
「香港三大花火大会」の話に戻します。
一つ目は「香港賀歲煙花匯演」です。旧正月三が日の真ん中の日の夜にヴィクトリアハーバーで行う、長さ30分ほどの花火大会です。旧正月は毎年日にちがずれますが、大体1月下旬から2月中旬までになります。日本の花火大会と同じく花火の色や大きさにこだわるほか、香港色が強い花火もあります。例えば干支に合わせてその年の動物のイメージ柄や、財運を高める銀錠/馬蹄銀の形の花火があります。また、花火に合わせて音楽も流され、テレビ中継もあります。
旧正月花火大会は1982年から2017年まで毎年行われてました。2018年はキャンセルされ、2019年に再開したのですが、2020年以降は社会状況により休止状態に入っています。旧正月に花火と爆竹で祝うのは華人の慣習ですが、1967年香港左派暴動(またの名は六七暴動)の影響で、当時の政府は花火と爆竹など爆発物への取り締まりを強めていました。1982年より少し前に、市民から花火を解禁して欲しいとの声が上がり、香港社会も返還問題にめぐる不安もあり、政府も華人の慣習を尊重する気持ちで、方法を探っていました。ちょうどこの1982年にスポンサーのジャーディン・マセソン・ホールディングスの創立150周年と重なったため、一回目の花火大会が行われました。最初の三年間は旧正月の元日の夜に花火大会を行ったのですが、入場規制などの行政に合わせた結果、1985年以降は真ん中の日の夜に変更して現在に至ります。
2018年の回がキャンセルされた理由は、花火大会予定日の一週間前に死者19人、負傷者66人の大きな交通事故があったからです。亡くなられた方々の初願忌の日にお祝いするのは良くないとの意見が議会に上がり、花火大会がキャンセルされました。翌年に再開したものの、2020年は2019年の大型社会運動の影響、そして2021年は新型コロナウイルスの影響で2年連続キャンセルとなりました。事実上は休止状態になっています。
二つ目は「香港慶祝中華人民共和國國慶煙花匯演」です。名前の通り、この花火大会は香港特別行政区が中華人民共和国の国慶節を祝うためのものです。そのため、返還された1997年から毎年10月1日夜にヴィクトリアハーバーで行われます。2013年、2014年と2019年以降は社会状況によりキャンセルされています。この花火大会も30分ほどの長さで、中華人民共和国を賛美する音楽が伴います。
2013年の回がキャンセルされたのは、前年の花火大会当日に香港海域で死者39人、負傷者92人の大きな船舶事故があったからです。事故の死傷者を追悼する意を表すためでした。2014年の10月1日は雨傘運動が始まったばかりであったため、その年の回もキャンセルされました。その後、政府は市民の反対を押し切って、2015年に再開させました。2019年の回は大型社会運動の影響、2020年は大型社会運動と新型コロナウイルス両方の影響で2年連続のキャンセルとなりました。今年の回は関連の政府部門が準備の詳細を未発表のため、キャンセルとなる可能性が大きいです。事実上これも休止状態になっています。
三つ目は「香港特別行政區成立周年紀念煙花匯演」です。これは前述の二つと少し違って、五年に一度開催する花火大会です。1997年に一回目が行われ、今まで計五回行われました。この花火大会も30分ほどの長さで、「祖国に感謝の気持ち」を謳う音楽が伴います。これは前述の二つより豪華で、花火だけではなく、ヴィクトリアハーバー両岸のビルからのレーザーショーも同時に行われます。これの開催回数が少ないので、上記のように社会状況の影響でキャンセルすることも少ないですが、2022年の回はすでに新型コロナウイルスの影響でキャンセルと発表されました。それ以降また再開されるかどうかはわからないですが、このレアな花火大会を見られた方はかなりラッキーですね。(笑)
以上が「香港三大花火大会」です。もう一つ補足ですが、2007年から2012年に隠れ花火大会の「カウントダウン花火」もありました。12月31日から元日の数分間に行われる花火とレーザーショーです。2012年以降はスポンサー関係で中止になりました。
花火大会は楽しむべきものである一方、空気汚染の問題もあります。香港は大きい交通量故の排気ガスと中国側からの風により、空気はそれほどきれいではないのです。それでも毎年花火大会を開催しています。花火大会は大気汚染を悪化させる原因の一つであると環境団体からの指摘もあります。また、近年では、毎年合わせて1時間の花火を打ち揚げているために大量の政府予算を使うことに疑問視する声もあります。しばらく花火大会は香港から消えますが、いつか再開する時に、友達に「睇煙花」を誘いましょう!最後ですが、香港では花火への取り締まりがあるため、線香花火などのおもちゃ花火は持ち込み不可かつ遊んではいけません。そのため、間違って香港で友達に「放煙花」を誘わないでくださいね。日本なら無問題です!