賀年菜(ホー・ニン・チョイ)=香港のおせち料理
またもや食べ物に関する内容です。皆さまはお察しかもしれませんが、このシリーズを書いている人は食いしん坊です(笑)でも今回は茶餐廳のことならぬ、旧正月に関する香港の食の事情です!日本のと似てる部分もありますので、よろしければぜひご一読くださいね。
日本は今では太陽暦を取り、12月31日が大晦日、1月1日が元日ですが、「洋中折衷」の香港では太陽暦(西暦)の新年も太陰暦(旧暦)の新年も祝います。12月25日にクリスマスを祝い、31日にカウントダウンをし、1月1日に休み、2日から旧正月あたりまで仕事をし、また旧正月の新年を迎え、ワイワイ過ごすのが習慣です。そのため、香港の人たちにとって、正月気分がすこし長いです(笑)
日本は大晦日に年越しそば、元旦にお雑煮とおせち料理を食べる習慣があります。香港にも旧正月前後に食べるド定番な物があるのです。時系列でご紹介いたします。
まずは冬至の日に家族そろってご飯を食べます。「做冬(ゾウ・ドン)」といいます。香港人や広東の人にとっては「冬大過年(ドン・ダイ・グゥオ・ニン)」で、つまり年越しより冬至の日が大事とされています。いつもより豪華で縁起がいいおかずを用意し、デザートには家族円満、皆が集まることを意味する「湯圓(トーン・ユン)」を食べます。そして、大晦日には家族そろって「團年飯(トュン・ニン・ファン)」を食べます。食事内容は做冬とさほど変わりません。做冬と團年両方とも家族そろって晩ご飯を食べる大事な日なので、この二日にはほとんどの人が早めに仕事を終わらせ、早めに家に帰ります。会社もそれを容認します。いくら働くのが大事とはいえ、少なくともこの二日間だけは家族と居ることを一番にします。
また、年初一(ニン・チョー・ヤッ、元日)の日は朝昼晩のどれか一食を「齋(ザイ)」つまり肉抜きの食事にする人がいます。これは仏教から年初一に殺生を避けるためです。このこだわりがない人でも年初一はわりと質素な食事を取ります。そのほか、日本と同じく、お餅を食べます。しかし、日本のお餅と大きく違います。
年初一に質素な食事を取るのは、翌日の年初二に豪華な「開年飯(ホイ・ニン・ファン)」があるからです。食事内容もやはり做冬や團年飯とさほど変わりません(笑)連続で似ているような食事を取り、飽きるのでは?と思う方もいると思いますが、同じ食材でも味付けや調理法を変え、飽きさせない工夫をします。また、日本のおせちのように自分で調理せず、「盆菜」を取る家庭もあります。
中国の北の方には旧正月に餃子を食べる習慣があるそうですが、香港ではその習慣がありません。ここからは上記の豪華な食事内容について数例をご紹介いたします。
魚(ユー)または鮑魚(バウ・ユー)
頭から尻尾までちゃんとあった方が縁起がいいので、姿蒸しにすることが多い
語呂合わせ:魚と余るの発音(ユー)から「年年有餘(ニン・ニン・ヤウ・ユー)」
意味:毎年、余るほどのお金やモノがあるように
蝦(ハー)
語呂合わせ:蝦と笑う時の擬音語「哈(ハー)」の発音から「哈哈笑(ハー・ハー・シウ)」。
意味:いつもどんな時も笑っているように
調理法:塩茹で、醤油炒め、ケチャップ炒め
豬手(ジュ―・サウ)
豚の前足(手)
語呂合わせ:肉厚い豚の手から「横財就手(ウヮーン・チョイ・ザウ・サウ)」
意味:財運、金銭運が上がること
生菜(サン・チョイ)
レタス
語呂合わせ:生菜と生財(サン・チョイ)
意味:財宝がどんどん生まれるように
蠔豉髮菜(ホウ・シー・ファッ・チョイ)
干しカキと髪菜、藍藻(シアノバクテリア)の一種。髪菜は髪の毛でも野菜でもないが、黒くて細長い見た目から髪の毛に似て、髪菜と名付けられた
語呂合わせ:「發財好市(ファッ・チョイ・ホウ・シー)」
意味:景気が良く、財運がアップする
鷄、肉
とり肉や肉料理
語呂合わせや意味は特にないが、豊かな食卓の表現
そのほかに、干しアワビまたはアワビの缶詰、花膠(ファー・ガウ、魚の浮き袋の干し物)、干し貝柱、干しなまこなどの乾物や、新鮮なホタテやオイスターなども人気な食材です。
盆菜(プーン・チョイ)=縁起のいい食材、全員集合!
前にも触れていた「盆菜(プーン・チョイ)」は見た目がインパクトがある料理です。起源は二つありまして、一つ目は南宋末期の君臣が敵兵に香港あたりに追い込まれた説です。村人たちがお腹ペコペコで避難してきた忠臣たちに同情し、各自の家から食べ物を出してご馳走しようとしたが、お皿が足りず、大きい木桶で代用して今の盆菜になったのです。二つ目も同じく南宋末期です。最後の皇帝が敵兵に追い込まれ、臣下たちと香港に逃げてきた際、村人が皇帝に食事を出そうとするが、やはりお皿が足りず、大きい木桶で代用したのです。本来、盆菜は香港の「圍村(ワイ・チューン)」で祝い事がある時に食べるものですが、近年は圍村以外で、旧正月の食卓に出されることも多いです。そのため、縁起のいい食材の全員集合になっています(笑)
盆菜の中身ですが、上の方は縁起のいい、見た目の鮮やかな食材で、下の方は味がよくしみる食材を使い、色んな層で積み重ねて行きます。上の方は見た目がいいが、実は下の方が上の層の食材のうま味をすべて吸収して、いちばん美味しいのです。下に大根、タロイモ、白菜、湯葉、豬皮(ジュ―・ペイ、ポークスクラッチング)、イカなど。次に豚バラ肉の煮込み、干しえび、干し椎茸など、さらにタウナギ、ケンヒーのつみれなど。最後は干しカキ、花膠、鶏肉、えび、干し貝柱、干しアワビ、髪菜、彩りのブロッコリーなどです。
昔の圍村で盆菜を作るときは各自担当するパートを決め、協力して作るものでした。作る過程から結束が強まるのです。また、見た目が華やかで、インパクトのある盆菜ですが、実は上下関係をなくす食事例です。圍村では家父長制が厳しく、上下関係もしっかりしているところです。この盆菜を食べるときだけは年齢や性別など関係なく、同じ盆菜を囲い、同時に食べるのです。これはかなり珍しいことであるそうです。また、今は加熱する際の便利さと衛生面を考慮し、ステンレス製の器や使い捨てのアルミ容器を使用することが多いです。
ここまで、香港人の旧正月の食卓を一部紹介しました。ほかに旧正月食品とお餅があります。それについては、別途のブログで紹介いたします。興味がございましたら、ぜひ合わせてご一緒にお読みください。