年糕(ニン・ゴウ)=香港のお餅
【旧正月の食卓編】と合わせて、香港人馴染みの「賀年食品(ホー・ニン・セッ・バァーン)、旧正月食品」と「年糕(ニン・ゴウ、香港のお餅)」をご紹介いたします。
まずはお餅です。日本のお餅はもち米を蒸して、杵でつく「つき餅」ですが、香港の年糕は穀物の粉に湯や具材を加えて練り、加熱してできる練り餅です。また、日本が正月に食べるお餅は形を別にして、一種類だけですが、香港の年糕は少なくとも四種類あるのです。
一つ目は年糕(ニン・ゴウ)です。もち米粉、赤糖とピーナッツオイルでできている定番年糕と、ココナッツミルクや練乳などを加えた椰汁年糕(イェー・ザップ・ニン・ゴウ)があります。また、二つの生地を混ぜて、錦鯉模様にしたものもあります。蒸して冷ましたものなので、食べる時は切り分けて再加熱すればいいですが、ここでド定番な食べ方も紹介いたします。それはフライパンで焼くのです。そのまま焼くのもいいですが、溶いたたまごにくくってから焼く方が美味しさが増します。甘口でもちもちしている年糕、おそらく食べたことがない香港人はいないと思います。
二つ目は蘿蔔糕(ロー・バッ・ゴウ)です。蘿蔔(ロー・バッ、つまり大根)、うるち米粉、コーンスターチ、蝦米(ハー・マイ、つまり干しえび)、臘肉(ラップ・ヨッ、つまり干し肉)、臘腸(ラップ・チョーン、つまり干し腸詰め)と冬菇(ドン・グー、つまり干し椎茸)でできているしょっぱい系の年糕です。蘿蔔糕は普段の飲茶(ヤム・チャー)で點心(ディム・サム)としても人気です。これも蒸して冷ましたものなので、食べる時は再加熱するかフライパンで焼くかです。焼いた蘿蔔糕にニンニク入りチリソースをつけて食べるのが通です。また、サイコロ状に切って、XO醬で炒めた食べ方も人気です。
三つ目は芋頭糕(ウー・タウ・ゴウ)です。材料と作り方は蘿蔔糕とさほど変わりません。メインの蘿蔔から芋頭(ウー・タウ、つまりタロイモ)に変わるだけです。芋頭は蘿蔔より水分が少ないので、やや硬めで芋頭の香ばしさをしっかり感じます。食べ方はやはり再加熱するかフライパンで焼くかです。
四つ目は馬蹄糕(マー・タイ・ゴウ)です。馬蹄(マー・タイ)、和名シログワイ、英名ウォーターチェスナットという植物の粉、馬蹄の実、しょ糖、ラードと水でできている甘口の年糕です。先の三つと違い、馬蹄糕は唯一冷たいままでも食べられるのです。むろん、焼いても美味しいです。
年糕の糕は餅の意味で、発音が高いの高(ゴウ)と同じのため、語呂合わせで歩歩高昇(ボウ・ボウ・ゴウ・セィーン)、一歩ずつ上へ上へという縁起のいい意味があります。これらの年糕はみな美味しいですが、もち米粉やうるち米粉などのデンプンや、塩分の高い干し肉を中心とした材料、また油で焼くため、カロリーがかなり高めです。食べるチャンスがある際はくれぐれも注意してくださいね。
賀年食品(ホー・ニン・セッ・バァーン)=旧正月食品
旧正月の間(年初一から十五)、香港人のリビングには赤い蓋付きの箱が置いてあるはずです。それが全盒(チューン・ハプ、正しい字は「攢盒」)です。全盒は丸い形で仕切りがあるお菓子入れです。ちなみに、沖縄にも全盒に似た「東道盆」があります。香港の場合は中に縁起のいいお菓子を入れて、旧正月の間に家に訪れる親戚や友達とお話や遊びながら食べます。ここでもいくつか定番なまたは縁起のいい賀年食品を紹介いたします。
1瓜子(グヮー・ツィー)=スイカ、カボチャ、ヒマワリの種のロースト
語呂合わせ:なし
意味:上から瓜子を取る動きがお金を掴み取る動作に似るため、今年もたくさんお金が掴めるようにです。
2糖蓮子(トーン・リン・ツィー、)、糖椰子(トーン・イェー・ツィー)、糖蓮藕(トーン・リン・ンァウ)=ハスの実、ヤシ、れんこんの砂糖漬け
語呂合わせ:蓮子=連生貴子(リン・サン・グワィ・ツィー)、椰子=爺子(イェー・ツィー)、蓮藕=年有(ニン・ヤウ)
意味:まず糖〇〇は砂糖漬けの意味で、甘いもの自体が縁起がいいです。ハスの実は夫婦に次々とおめでたいという祝福が込められています。ヤシの爺子はお爺ちゃんも子も孫もいる=長生きや大家族になるという意味です。蓮藕の「年有」は毎年も有るという意味で、有るのは幸せかお金かなどです。
3開心果(ホイ・サム・グォ―)=ロースト殻付きピスタチオ
語呂合わせ:広東語で開心は喜ぶという意味で、開心果はムービーメーカー、この人がいれば周りも楽しくなるという意味です。
意味:少し「口が空いている」ピスタチオは笑顔にも似ているので、喜びをもたらすことです。
4油角(ヤウ・ゴッ)、笑口棗(シウ・ハウ・ゾウ)
全盒には入れないが、揚げ物はほかにも煎堆(ジン・ドゥィ)があります。煎堆は中が空洞で、外にごまがたくさんついているもっちりとした揚げ物です。大きく揚げられれば大きいほど縁起がいいとされています。ちなみに、沖縄に油角と似た闘鶏餃(たうちぃちょう)という食べ物があるみたいです。おそらく味は違いますが、少し意外でした。
語呂合わせ:笑口棗=笑口常開(シウ・ハウ・ショーン・ホイ)
意味:三つとも揚げ物で、笑口棗は「常に笑っている」という意味があります。黄金色に揚げられた煎堆と油角はお金つまり財運がアップするという意味があります。
5糖(トーン)、朱古力金幣(チュー・グー・レッ・ガム・バイ)=キャンディー、チョコレートコイン
語呂合わせ:なし
意味:糖は広東語で、砂糖の糖もあれば、キャンディーの糖という意味があります。厳密にいえばイントネーションが違います。先述通り、甘い糖はもの自体が縁起のいいものです。朱古力金幣は見た目から財運がアップする願いが込められています。しかし、朱古力金幣は味自体があまり美味しくないのが多く、残されがちです(笑)
以上が一部の伝統的なお菓子ですが、健康志向の強い現代人はよりヘルシーなもの、例えばローストナッツやドライフルーツで代用することもあります。
みなさんに香港のことを紹介しようとしたら、長い長い文章になってしまいました。ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます!お察しのとおり、香港の旧正月をまとめると、食べると縁起がキーワードです。香港で旧正月をお過ごす際は正月太り要注意です(笑)
最後は食べ物から離れてしまいますが、香港人の間にもお年玉を渡す習慣があります。しかし日本の白いポチ袋と違い、その年の干支や祝福する言葉が書いてある真っ赤なポチ袋を使います。なぜならば、赤は慶びの色で、白は喪の色とされているからです。また、既婚者が未婚者にお年玉を渡すのが基本的です。ほかにも、旧正月に関する習慣がたくさんあります。いつかご機会がありましたら、またご紹介させてください。