お久しぶりです。冰室と茶餐廳については、遂に完結編のフードになります。最初の紹介でも少し触れていますが、冰室と茶餐廳の最大の違いはそれぞれが所持するライセンスです。冰室は「持牌小食食肆(LICENSED Light Refreshment Restaurant)」で、茶餐廳は「持牌普通食肆(LICENSED General Restaurant)」です。そのため、冰室ではガスコンロの火で食材を加熱することが禁じられているため、指定されかつ制限された軽食と飲み物しか出せません。茶餐廳にはそのような制限がなく、冰室で売られている食べ物も、ご飯ものと飲み物を販売することができます。
早速、冰室の代表的な軽食を紹介します。火を使うことを制限されているため、パンが主な食事メニューになります。まずは三文治(サム・マン・ジ)、サンドイッチです。香港の三文治の特徴は八枚切りの食パンを使うことです。さらにカスタマイズで飛邊(フェイ・ビン)つまり食パンの耳を取ることも、烘底(ホーン・ダイ)つまりパンをトーストにすることが選択できるのも香港らしいです。
具材は基本的に、スクランブルエッグ(蛋、ダン)、ハム(火腿、フォー・トイ)、ランチョンミート(午餐肉、ンー・ツァン・ヨッ)、コーンビーフ(咸牛肉、ハム・ンアウ・ヨッ)などから自由に一つか二つを選べます。それぞれの組み合わせで三文字の呼び名ができます。例えば、腿蛋治=ハムエッグサンドイッチ、餐蛋治=ランチョンミートエッグサンドイッチ、蛋牛治=エッグコーンビーフサンドイッチです。お気づきだと思いますが、加工肉とスクランブルエッグの組み合わせが多いです。加工肉の塩気とスクランブルエッグの相性が抜群だからです。
そのほかに、具がたくさん入っている公司三文治(ゴン・シー・サム・マン・ジ)もあります。公司三文治はランチョンミート、ハム・スクランブルエッグ、トマト・キュウリまたはレタスなどが入っていることが多く、欲張りさんにおすすめです。公司三文治はトーストにした耳なし食パンを使い、4等分三角形にカットしてから提供されることが多いです。
次も食パンを使うメニュー、多士(ドー・シ)です。トースターで焼いた食パンにバター(牛油、ンアウ・ヤウ)、練乳(練奶、リン・ナイ)、ジャム(果醬/果占、グォ・ジョーン/グォ・ジム)、ピーナッツバター(花生醬、ファー・サン・ジョーン)から塗るものを一つか二つを選びます。それぞれの組み合わせで三文字の呼び名ができます。例えば、奶油多=練乳バタートースト、油占多=バタージャムトースト、奶醬多=練乳ピーナッツバタートーストなどになります。今度冰室や茶餐廳に行くときはぜひ三文字で頼んでみてください!
続いては違うパンの紹介です。最近日本にも進出した香港起源の菠蘿包(ボー・ロー・バウ)です。菠蘿はパインアップルの意味ですが、材料としてパインは一切使われていません。ただ見た目がパインに似てるだけです(笑)日本では「香港のメロンパン」として紹介されることは多いですが、実はかなり違います。メロンパンはパン生地の上にクッキー生地を被せてから焼くが、菠蘿包の上にある「脆皮(チョイ・ペイ)」はクッキー生地と異なるものです。また、菠蘿包には進化形の菠蘿油(ボー・ロー・ヤウ)があります。温かい菠蘿包の真ん中に分厚く切った冷たいバターを挟むのです。カロリーは高いものの、悪魔級でやみつきの食感と味です。菠蘿包は中に具やあんが入っていないパンですが、最近では具が入っているものも増えているみたいです。伝統的な菠蘿包が好きな筆者個人的には、少し邪道だと思う時もあります。みなさんはどんな菠蘿包が好きですかね?
最後は蛋撻(ダン・タッ)、エッグタルトです。香港の蛋撻は2種類あります。クッキー生地に似た撻皮(タッ・ペイ)でできた牛油蛋撻(ンアウ・ヤウ・ダン・タッ)とパイ生地に似た酥皮(ソウ・ペイ)でできた酥皮蛋撻(ソウ・ペイ・ダン・タッ)です。生地への好みはかなり分かれます。蛋撻がイギリスから広州、さらに香港へ伝わって来たときは酥皮だったそうですが、冷めた酥皮はひび割れしてしまうため、とあるベーカリーの職人さんが改良案を考えました。クッキーは冷めても割れにくいと思い、クッキー生地で作り、牛油蛋撻が生まれたのです。ちなみに、香港最後の総督、クリストファー・パッテン氏が牛油蛋撻のファンであることが有名です。今度2種類を見かけたときは是非食べ比べてみてください!
冰室は軽食しか提供できないが、高カロリーのものが多いため、ドリンクとセットで食べると、かなり満足感があります。冰室は本来、力仕事をしている人々が仕事の合間に糖分摂取とエナジーチャージするのに行く場所なので、そのため、カロリーが高い軽食と糖分、カフェインが高いドリンクが多いです。今は冰室も茶餐廳と同様なライセンスを所持するため、軽食しか提供できないという制限はなくなりました。このように冰室の歴史をたどると、過去の香港人の生活が垣間見えます。次回のフード後編は本当の本当の最後で茶餐廳のフードについて紹介します。ぜひ最後までよろしくお願いいたします。