昔ながらの香港のテーマパーク
電車を降りると、綱島駅のホームから遠くに色とりどりの建物が建ち並ぶ2階建てのビルが目に映った。インタビュー当日は小雨が降り、店外の明るいデザインが街に活気を与えた。
店に足を踏み入れると、80年代のレトロな装飾がタイムトンネルのようになり、強いノスタルジックな雰囲気に浸る。 1階にある2つ折りたたみ式テーブルとスツールにはステンレス製の箸置きがあり、香港の屋台で食事をしているような気分だった。この時、八十港のオーナーであるケルビンさんは、キッチンで午後の食事の準備をしていたので、折りたたみ式のスツールに座って、ミルクティーを飲みながら待つことにした。忙しい時間帯が過ぎ、2階でインタビューを行うことになった。
2階に上がると、壁が昔ながらの広告壁紙で覆われていた。壁の一つは質屋の看板のように見える「八十港」に書かれているネオンサイン、それが最も印象的であった。店内の鳥籠、扇風機、ラジオはすべてケルビンさんが香港の友人に頼んで日本に輸入させたものであり、店の外で異なる色で塗られていた亜鉛と鉄の郵便箱は香港の職人が一つ一つ鋳造して作ったという。
レストランのデザインと名前はもともと同じ由来であり、レストランの名前「八十港」について尋ねたとき、オーナーはこの名前には2つの意味があると言った。 もちろん「80年代の香港」を意味しており、香港が独自のポップカルチャーを輸出する黄金時代でもあり、この世代の日本人にも強い印象を残した。しかし、レストランの装飾は若い世代の日本人にも注目を集めており、ヴィンテージアイテムやレトロの裏話について、訪ねてくる人もたまにいるという。
日本へ移民 香港の飲食文化を残す
昔ワーキングホリデーで来日したオーナーのケルビンさんは日本での生活に心を奪われ、現在は結婚をし、子供を育てているケルビンさんが日本へ再び来日し、生活するわけとは、子供のためであると:「(現在の香港での教育制度では)子供は多くのものを学ばされ、不安を感じます。。。息子に自分のような経験をさせたくない。。。(日本では)息子に自分の人生の在り方を選ばせることができる。」と言う。
レストランを始めた頃、八十港は主に「車仔麵」を作っていました。ケルビンさん曰く「車仔麵」は香港から少しづつ消えていると考え、この産業に入る若者もあまりいないことで、「車仔麵」の文化を残したいと考えた:「皆に「車仔麵」のことをもっと知ってもらい、忘れないでほしい。」
のちに、様々な炒め物や家庭料理がメニューに追加され、多くの香港人は家庭的な料理を食べたがっていると言う。「ニンニクの白菜炒めなどの、実は家で作られるけど、レストランにはないものを私は作りたいと思った。」
香港風味の再現
八十港の開店以来、最も人気のある料理はオーナーがおススメの牛ホルモン麺である。 牛ホルモン麺には、牛バラ、センマイ、ハチノス、大根などのトッピングがあり、 またスープの魂となるのは牛肉を煮込んだ出汁である。甘くてマイルドな花椒の風味が香る。牛ホルモン麺以外に、お客様が自分のお好みによって、好きな麺で作ることもでき、麵の種類も色々あり、太麵、油そば、フォーなどが選べる。
香港の味を再現するためには、肉屋から直接入荷しなければならないとケルビンさんは主張した。開店前に同業から日本の肉屋を紹介されたおかげで、スーパーなどでは手に入らない部位を入荷できたという。
メニューを見て、塩漬け魚と鶏肉チャーハンを追加で頼むことにした。 香港のレストランとは異なり、チャーハンの鶏肉と塩漬けの魚は細かくスライスされており、よりまろやかでご飯粒もはっきりしていた歯ごたえだった。
主食を食べた後、デザートもほしくなったので頼むことにした。 八十港では小豆餡や湯葉卵などの中華デザートを提供しているが、よく考えてみると、久しぶりに香港式ワッフルを食べてなかったことに気づき、ワッフルを注文することにした。 出来たての香港式ワッフルは、半分に切ると見た目はもちろん魅力的で、食べるとさらにサプライズがあった。 ワッフルにはピーナッツバターが塗られており、そのピーナッツバターには歯ごたえがあり、とても香ばしかったのだ。 それ以外にも八十港では、香港の「茶餐廳」で飲めるミルクティー、アイスレモンティー、小豆アイスなどの飲み物も提供している。
在日香港人の溜まり場
インタビューの最後に、ケルビンさんは「お互いに助け合い、支え合うことが最も重要だ」と語った。ケルビンさんは八十港が在日香港人たちの集いの場になることを望んでいたのだ。 この2年間コロナの影響を受けて、皆親戚や友人と会うことは難しくなっており、新しい友人を作る機会さえ減ってしまったのだ。 しかし八十港では、従業員になった常連もいれば、さらに沢山のお客様が親しい友人になったりと。 香港の食べ物が恋しいかはともあれ、ぜひ八十港に来てみてください。 ケルビンは:「お喋りしたり、食べたり、相談でもなんでも大歓迎!」と言った。