香港を訪れることがある方は、このようなドリンクが店先に置いてある店を見たことありますか?何の店なのかご存知でしょうか。これは香港の特色店舗の――涼茶舗(リョーン・チャー・ポウ)です。先に一つことわっておきます。今回は漢方薬に関する内容になりますが、実際に服用する際は、専門家や医師の指示に従ってください。
涼茶、涼茶舗とは?
涼茶(リョーン・チャー)は漢方薬を使ったハーブティーです。ハーブティーとはいえ、優雅にガラスのティーポットに入ったようなおしゃれなものではないし、冷たい(涼は涼しい、冷たい意味)お茶と書きますが、冷たくも、おいしくもありません。(笑)どっちかというと、苦味が強いものや漢方薬特有の匂いがする飲み物です。西洋医学は症状や患部に直接対処するのに対し、中医学は身体全体を改善するという異なった二つの考えです。また、西洋医学は「外部」から、中医学は「内部」からという考えの違いもあります。1930、40年代では、西洋医学を拒む人も多かったようですが、両方の文化を持ちあわせる香港では、今でも普段から中医師が処方された漢方薬で体質改善しようとする人が多いです。
舗(ポウ)は広東語でお店の意味です。二つの言葉を繋いで、涼茶舗はつまり漢方ハーブティーを販売する店、厳密に言えば、病院ではないです。西洋医学にせよ中医学にせよ、とにかく医者に見てもらい、薬を処方されるのは高いです。一方、昔は力仕事をする人が多く、生活習慣病より、体を使いすぎて過労で倒れたことも多いです。そのため、普段から手軽な方法で体調を整えたほうがいいとされます。
さらに涼茶舗は1960、70年代ではわりとカリスマ的存在でした。ラジオやテレビが普及する前、涼茶舗でハーブティーを飲みながら、レコードやラジオを聴いたり、テレビを見たりすることができました。ちょっとした喫茶店のようで、涼茶舗でデートする人もいたそうです。今は店舗数も減り、利用形態もコーヒースタンドのように変わり、少し立ち寄って、店先で「立ち飲み」するか、持ち帰りするかを選べるようになりました。
また、涼茶などの漢方薬を作るには材料を買い、水から薬の成分を煮出すなど手間がかかります。煮出すときの火加減も大事で、ガスコンロがまだない時代はとにかく家で涼茶を作るのは時間がかかり、大変な作業でした。店が煮出す過程までし、できた製品を売るという発想から涼茶舗は生まれたのです。物によっては冷たくしても効果に影響がないが、漢方薬は基本的に冷めないうちに飲む方がいいとされているため、保温するため巨大ひょうたん形の銅製鍋に入れることが多く、涼茶舗の顔になっていました。最近はそのような伝統的な店構えも少なくなっています。涼茶舗は家族経営が多く、それぞれ独自の漢方の配合を持つことも多いです。店によってラインナップが違うこともありますが、ここで四つほど定番の涼茶をご紹介します。
廿四味(ヤ―・セイ・メイ)
名前の通り、二十四種の漢方(店によっては二十八種)でできた涼茶で、体内に蓄積した「熱」を抑える作用があります。色はまっ黒で、特徴はとても苦いです。今の我々の生活習慣にとっては効果が強すぎることがありますが、体力労働がメインだった時代にはさまざまな症状に効きます。
火麻仁(フォー・マー・ヤン)
麻の種がメインの涼茶で、腸活の先駆者で、下痢に効く、髪の毛にもいいとされています。苦くなく滑らかで、コーヒーラテのような色です。冷たいままで飲めます。
銀菊露(ンァン・ゴッ・ロウ)
スイカズラと菊がメインの涼茶で、目と肝臓にいいとされています。冷たいままで飲めて、夏にぴったりです。ジャスミン茶のような色で甘味もあるので飲みやすいのです。
酸梅湯(シュン・ムイ・トーン)
烏梅(うばい)やモクセイがメインの涼茶で、コーヒーのような色で甘酸っぱく、冷たいままで飲めて、夏にぴったりです。日本人の感覚としては夏に飲む紫蘇ドリンクや梅ジュースに近いかもしれません。
近年はペットボトル入りの涼茶やティーバッグなど、より簡単に涼茶を飲めるよう製品がありますが、涼茶舗で飲む涼茶はなぜか魅力的です。(笑)筆者が香港にいるときもやはり涼茶舗を通るたびに立ち寄ってしまい、顔をしかめながら苦い涼茶を飲みます。文字通り「良薬は口に苦し」ですかね。どれを飲めばいいかわからないときは涼茶舗の人に聞いてみてもいいです。このようにして香港人は普段から養生意識が高いです。香港人の養生術は他にも多くありますが、機会があればまたご紹介します!最後にもう一度ですが、涼茶も漢方薬の一種なので、体質や体調に合う合わないというのもあり、服用の際は専門家や医師の指示に従ってください。