長く日本で暮らしていて、ふと鹹魚雞粒炒飯(鶏肉のアンチョビチャーハン)に香港式ミルクティーに、カレーフィッシュボールが食べたくなるときありませんか。でも安易に香港には帰れないし、日本にある香港料理屋さんに行くのもなかなかできない。そんな時に、もしネットで注文して家まで届けてくれるようなことがあればいいなぁと思ったことありませんか。今そう思うあなたに、日本に居ながら香港の商品を購入できるHKストア(hkstore.jp) をオススメいたします。
「恋しい」から始まり 輸入困難の維他奶(ビタソイ)の壁を乗り越える
HKストアのオーナーの秋(あき)さんは元々日本化粧品の輸出ビジネスを営んでいました。2020年にコロナが流行り、香港に帰ることができなくなっている間、香港の食べ物が恋しくなり、次第に香港の食べ物を日本で販売したいと考えるようになりました。2021年3月にHKストア(hkstore.jp)は正式にオープンし、最初に登場した商品が、香港人なら誰でも知っている維他奶(ビタソイ)でした。
維他奶(ビタソイ)で先陣を切るのも様々なことを考量したのです。安定した供給で、日本人の口に合うもの、何より「香港」らしさを欠かさないこと、これら全てをクリアしたのは「メイド・イン・ホンコン」の維他奶(ビタソイ)でした。だが、実際に輸入するのはとても厳しいことです。日本の食品輸入プロセスは複雑で、まずは責任者として相応の資格が必要で、その上で、食品検疫のときには、製造方法、殺菌処理の温度や秒数など細かい資料を提供しなければならない、ようやく提出したら、次は輸入食品の関税、消費税、諸税の計算が待ち構えています。
様々な難関を突破し、HKストアは維他奶(ビタソイ)の日本上陸を果たせました。今ではHKストアのサイトからのみならず、日本にある香港レストランやスーパーのKINOKUNIYAからでも購入できます。
戦略転換 供給拡大
維他奶(ビタソイ)の輸入はなにより第一歩なわけで、HKストアの真の理念は香港のものをより多くの日本人に知ってもらい、日常的に香港のものを使ってもらうことです。先述のように、日本に一から香港の商品を輸入するには時間とコストがかかります。しかし、コストを削減するためにステップを飛ばすことは秋さんの意向に反します。収支バランスなどを考え、秋さんは供給源を切り拓くことにしました。
当時の秋さんは日本で香港関連の商品を探しまわっていました。例えば、李錦記(リキンキ)の業務用、Tempo(ポケットティッシュ)など。ある日、横浜中華街で広東語を話す販売代理店を見つけました。そこに何度も足を運び、商談を重ね、少しずつ商品を増やしました。今のサイトにあるように、豊富な品揃えができたのがその成果です。どのように販売商品を決めていたのかに対し、秋さんは、赤字が出ない上で、最も重視しているのは日本の規定に従った合法かつ安全性の高いもの、同時に日本人と在日香港人の好みに応えたものと答えました。
秋さん自ら商談してきた商品のほかに、逆に製造元がHKストアで販売したいという商品もあります。秋さんは商品のバリエーションが豊富で、サイトが多様化したのもこのように積極的に委託販売を依頼する在日香港人のおかげであり、とても感謝していると言いました。現在サイト内では、調味料や飲みものの他に、様々な香港関連のグッズがもあります。皆様もぜひ気になった香港商品や好きな香港食品などを見つけてください!
クラウドファンディングで魚肉シューマイを再現
少し前に、シンガーソングライターのmiletさんが香港を訪れる際にシュウマイを召し上がり、自分のインスタグラムのストーリー機能で「???」をつけてシェアしました。一般的に日本でシュウマイと言えば、白い皮で豚肉を包んだものですが、香港のシュウマイは皮が黄色く、豚肉のものと魚肉のものがあります。味も食感も見た目も全く違うので、miletさんもカルチャーショックを受けたのではないでしょうかね。実はHKストアも2022年にクラウドファンディングで黄色魚肉シュウマイを再現するプロジェクトを実施しました。最終的に195名の方の支援の下に、沖縄の工場で日本の食材を使用した香港の黄色魚肉シュウマイを作ることに成功しました。
後にお客さんの声に沿い、レシピの改良などもありましたが、当時一緒に開発研究をしていたパートナーがイギリスに移住することになり、シュウマイの品質を保つことが困難なため、在庫がなくなった時点で一度販売終了となりました。秋さん曰く、商品の供給を安定させることがHKストアを運営するにあたっての最大の挑戦であるそうです。
環境変化 秘めている可能性を探りつづける
今年に入ってから水際対策が緩和され、日本と香港の往復便も復航され、「日本で香港のものを買う」という需要は段々と下がっています。秋さん自身も改めて、HKストアは今後、どのようなサービスを提供できるのか、どのような商品を販売していくのかなどについて深く考えることにしました。新たな試みの一つとして、ポッドキャストで、2月末に開始した「まいつぶ」で在日外国人からの投稿を寄せ集め、異なる文化背景を持つ人々と日本での生活に関する面白い話や興味深い話などをシェアしています。
ポッドキャストとオンラインショップは関係ないように感じますが、秋さんにとって原点はずっと変わらず――香港人というアイデンティティを残し、香港のことをより多くの人に知ってもらうことです。今後のことはわからないが、秋さんは今でも自分の信念を貫いています。
香港から食品を日本の食卓にお届けします! 香港でポピュラーなお菓子や飲み物を日本の方にも知っていただこうと取り組んでいます。