季節が巡って、また旧暦七月になりました。去年のブログ「香港の風俗習慣―旧暦七月」でご紹介した通り、旧暦七月は鬼月(グヮイ・ユッ)とも呼ばれています。「鬼(グヮイ)」が避けされがちですが、それと同時に人間は敬意を表すために、神・鬼・人間が一緒に楽しむ盂蘭勝會(ユー・ラン・シェン・ウイ)という祭りを開催します。
盂蘭勝會(ユー・ラン・シェーン・ウイ)とは?
前述した通り、盂蘭勝會は人間にだけでなく、神と鬼にも楽しんでいただく祭りです。そのため、通常の祭りと作法や流れがやや違います。
香港では、盂蘭勝會は主に道教式と仏教式の2種類に分けられています。旧暦七月限定の祭りなので、会場はお寺の広場以外に、露天サッカー場など広くて日常生活でアクセスしやすい場所もよく使われます。
盂蘭勝會が始まる前に、下準備として、舞台や看板、受付(神用、鬼用、人間用3種類)を築き、ランタンを高く掲げて、神と鬼を導きます。
盂蘭勝會の大きな看板 出典:躍變龍城
盂蘭勝會の流れ
盂蘭勝會は基本下記の流れになります。
・請神(チエン・サン)
・神功戲(サン・ゴン・ヘイ)
・派米(パーイ・マイ)
請神(チエーン・サン)
請神は神様を迎え入れるという意味です。
初めに道士がお経を唱えて、次に参加者パレードが会場から出発して、決まったルートを歩き、沿道のお寺から神様の像を会場の神座まで運びます。途中で平安を祈りにゴングを鳴らしたり、穢れを祓いに水やお米を撒いたりします。
出典:香港記憶
神功戲(サン・ゴン・ヘイ)
神功戲は神様と人間を対象にする演劇のことです。神様に演劇をすることで、功徳を積むというのがこの演劇の名前の由来です。
通常は旧暦七月十五日から十七日まで、3晩連続で行われます。神様に感謝を伝えつつ、神様と人間にエンターテインメントを提供するのが目的です。
神功戲の会場に行ってみたら、一つ気づきやすいことがあります。それは観客席の前の2列に誰も座らないことです。一説には、その席は神様(もしくは鬼たち)が座るから、人間が座ってはいけないと言われています。もう一説によると、その席は祭りのスポンサーの席ですが、スポンサーたちは多忙で見に来られなくて、空きっぱなしになったそうです。どの説が正しいのかは皆さんのご想像にお任せしますが、その2列に空きがあっても、座らないのが暗黙のルールなので、ご注意ください。
※神功戲は盂蘭勝會の定番ですが、他の祭りでもテーマに合わせて行われます。
出典:悦傳媒
派米(パーイ・マイ)
派米はお米を配布するという意味です。
神功戲は神様と人間のイベントに対して、派米は鬼と人間のイベントです。
ここのお米は人間に配布される前に、道士が鬼を招いて食べていただきます。この作法は「放燄口」(フォン・イム・ハウ)といいます。「放燄口」されたお米は鬼のご加護があるため、「平安米」(ペイン・オン・マイ)になり、人間、特に子供が食べたら、不安を鎮める効果があるそうです。また、一度に食べるのではなく、毎日食べるお米に少しずつ入れて一緒に炊くことで、その効果が延長できて、最終的に平安になると言われています。
出典:明周文化
2020年からの3年間はコロナのせいで、盂蘭勝會がなかなか開催できなかったですが、今年2023年はやっと再開できます。この時期に香港にいたら、近くのお寺やサッカー場に行けば、もしかして参加できるかもしれませんので、是非チェックしてみてください!